本書の著者は、日本人女性では初めて世界銀行副総裁になった西水美恵子氏です。本書は、主に開発機関で働きたい「女性」に向けて書かれています。
本書で著者が読者に伝えたかったことは、「世界銀行の仕事はただ単に
お金を貸すだけではなく融資を通じて、途上国の中で人々の生活を良くしたいという
熱い思いを持っている人を見つけて、その人たちを支援すること」(p126)、ということだと思います。
つまり、「融資は彼らを政治的圧力から守ること」(p126)です。
また、副総裁という役職でありながら、
フィールドに根ざした方だったことがよくわかります。
特に、エイズ対策のプロジェクトをしている時に、「売春は自国にはない」と言い張る途上国官僚との会議の前に、売春宿を自ら訪れ、売春宿が感染の源になっているという事実をつきつけたあたりなど、さすがと思います(p85 - 86).
さらに、自分のためになったのは、汚職を指摘する際に失敗ができないので、「何度も証拠を点検し、言い方も練習した」(p100)という点も参考になりました。
さらに、「投資効率だけでプロジェクトの成否を判断するのではなく、プロジェクトによって持続的な社会的な学習が始まったかどうかによって判断すべき」(p195)という主張もなるほどと思わされました。
ただ、
女性だからこそ達成できたという視点が多すぎる点が気になりました。
例えば、男性の大統領や首相だったから、彼女の説得が効果的だったという記述があります。
「私が政策提言などで、相手にいいにくいことをいうときは、母親的に諄々という場合と、感情的に怒って、怒りにまかせていう場合があります。この使い分けは、かなり意識的にやっています。私が地位の高い人に、「そんな馬鹿なことをして、どうするんですか!」と怒っても、やはり、女性の特権といいますか、相手は、目の前で怒っているのが、女の声で女の服を着ているので、ショックが和らぐのではないでしょうか。」(p90)
うーん、そんなに単純なのか・・・。
本書の構成は残念でした。
本書は3つの大きな章で構成されていますが、1章目の自伝、2章目の世界銀行に勤務する他の女性達の短いエッセイで、最後の章は西水さんのスピーチになっています。しかしこの最後の章が、前後の章との関連があまりないです・・・。
本書を読んで考えたことは国づくりは先進国だろうが、途上国だろうが、都市だろうが、田舎だろうが、結局肝要なものは
人のリーダーシップではないかということです。
リーダーシップがあってこそ、その国が教育水準が高ければそれが生きてきたり、科学技術が発達していればそれが経済発展に寄与したりするのではないかと思いました。
シンガポールのリークワンユー、マレーシアのマハティール、中国の小平などなど。
そうすると、リーダーシップって何かという話になりますが、僕はリーダーシップが取れる人は、
パッションとミッションと能力の3つを持っている人ではないかと思います。